電気化学療法について(新しい医療機器導入のおしらせ) 2026.02.06
この度、電気化学療法(以下ECT)に用いる電圧発生器 (ELECTROvet EZ V4.0 フランス製) を導入いたしました。

現在まで、腫瘍の三大治療として外科療法・化学療法・放射線療法が行われてきておりますが、この電気化学療法は第4の腫瘍治療法として最近注目を集めている治療法です。欧州では1997年から小動物臨床に応用されており、ヒト医療では2006年に標準治療となり実施されています。
内容としては抗がん剤と電気刺激を組み合わせたものであり、腫瘍組織に電気を流すことで抗がん剤の取り込みを通常の数倍~最大5000倍に促進する治療法です。用いるのは少量の抗がん剤のため、薬による副作用は多くはありません。主な副作用としては、実施部位に赤み・浮腫・潰瘍・痛みなどの局所反応が起こる場合がありますが、通常数週間で治癒することが多いとされています。
適応としては、
犬:肥満細胞腫、扁平上皮癌、肛門嚢腺癌、軟部組織腫瘍、悪性黒色腫、形質細胞腫、エナメル上皮腫
猫:扁平上皮癌、軟部組織腫瘍、肥満細胞腫
などが報告されていますが、手術後の再発予防としては多種類の腫瘍に効果があるのではないかと考えられています。
他に特徴として、
・主に体表や皮膚の下にある腫瘍に対して実施できる
・手術が難しい場合(腫瘍の場所や動物の年齢・持病・体力など)、または手術をご希望されない場合に検討される
・完全切除することができない腫瘍に対して、外科と組み合わせて実施することもある
・全身麻酔が必要(15~30分ほどの麻酔時間)
・出血、潰瘍、痛みなどで動物の生活の質(QOL)が低下している腫瘍に対して検討される
・アブスコパル効果を引き起こすことがある(腫瘍への局所治療によって、抗腫瘍免疫が活性化され治療していない他の病変にも縮小効果がみられる現象)
・1回の治療で効果がみられることもあるが、複数回(2~4回)実施することもある
・エキゾチック動物(当院の診療対象ではフェレット)への実施も可能

Veterinary Guidelines for Electrochemotherapy of Superficial Tumors. Tellado et al. 2022 より
口腔内メラノーマのワンちゃんで、左がECT治療前、右が治療開始から4ヶ月後の写真です。
現在、日本でも電気化学療法研究会が立ち上がっており、少しずつ報告が増えてきております。
全ての腫瘍に対して実施できる治療法ではありませんが、適応できるケースと飼い主さまのニーズに合えば非常に有効な治療法になり得るもので、今後広がっていく可能性の高い治療だと考えております。
これからも引き続き、ペットさんの腫瘍治療に向き合い、技術と知識の向上に努めて参ります。
電気化学療法についてご質問などがあれば、ご気軽にご相談ください。

